AIがどれだけ稼げるかは、人間の給与プールからどれだけ奪える かにかかっている
AI大規模モデル企業は一体どれくらいの利益を上げられるのか?国金証券の最新レポートは、従来の認識を覆す答えを提示した。ソフトウェア市場を注視するのではなく、人類の給与明細を見るべきだ。
企業がAIを導入する理由は流行を追うためではなく、コスト削減を目的としたものだ。AIによって一部の人材を代替し、効率を向上させ、コストを圧縮する――これこそが企業が実際にAIに資金を投入する根拠である。つまりAI収入の本当の上限は、ソフトウェア市場規模ではなく、AIによって再定義可能な給与プールの大きさだとされる。国金証券はこれを「AIによって再定義可能な給与プール」と呼んでいる。
国金証券の最新リサーチレポートによると、米国の年間給与総額約10.83兆ドルのうち、すでに1.45兆ドルがAIの影響範囲にある――つまり、これらの職種の仕事内容はAIが担うことができる、もしくはかなりの部分をAIがサポートできる状態にあるということだ。
では、AI企業はこの金額からどれほど収益を得ているのか?大手のAnthropicを例に取ると、年換算収入は約470億ドルで、1.45兆ドルの3.2%にすぎない。言い換えれば、わずかなシェアしか獲得できていない。
給与プールこそがARRの評価基準、市場規模よりも重視される
国金証券のレポートは、今回のAI収入の「エピック級成長上限」を最も直感的に理解するには、「AIによって再定義可能な給与プール」が一体どれほど膨大なのかを算出することだと指摘している。
レポートは、職種ごとのAI技術への暴露度と米国労働統計局(BLS)の2025年職業就業・賃金調査(OEWS 2025)に掲載された830の職種を照合して推計した。その結果、米国の総賃金収入約10.83兆ドルのうち、Anthropicが実際に観測した暴露度に基づくと、約1.45兆ドルの給与コストがAI技術による暴露範囲にあり、全体の13.4%を占める。一方、OpenAI/Eloundouによる理論的暴露度基準では、潜在的な影響規模が約5.68兆ドル、全体の52%以上に達する。
就業者数で見ると、米国の就業人口約1億5600万人のうち、実際の暴露人数は約1835万人(11.8%)。理論的暴露人数は約6830万人(43.9%)にも及ぶ。

レポートは、1.45兆ドルの給与コストは「現在の浸透率と技術水準におけるARR収入の理想的な上限」と理解すべきで、しかもこの上限はさらに値引きされる可能性があると強調している――つまり、企業は10万ドルの人件費をAI導入コスト1万ドルで代替できる場合もある。それにもかかわらず、現時点で大規模モデル企業のARRは数百億ドル程度で、上記の給与プール規模と比較するとAIの浸透率は依然低いままだ。
AIの影響は「高給優先」、知識職が最初に直撃
従来の自動化が主に製造業や反復的な肉体労働に影響を及ぼしてきたのとは異なり、今回のAIは高給・知識集約型・サービス業職種により直接的に影響を与えている。
レポートのデータによると、職種ごとの理論的AI暴露度は年平均給与分布に対して明らかに高い方へと偏っている――つまり高収入層ほどAIの影響度が顕著に高い。具体的な職種で見ると、収入分位数が最も低い群(クリーニング作業員、ベーカー、タイヤ工など)はAI暴露度が総じて低い。一方、金融プロダクトマネージャー(収入分位数96.6%、暴露度78.6%)、人事部マネージャー(95.3%、76%)、航空宇宙エンジニア(92.5%、89.3%)など高収入層の職種は高い代替リスクにさらされている。
業界単位で見ると、理論的な暴露度が最も高い3業種は、コンピュータ・数学(87.6%)、ビジネス・金融(78.2%)、法律(78.0%)となっている。だが実際の観測暴露度は理論値と必ずしも一致せず、最も暴露度が高いのは、コンピュータ・数学(35.3%)、オフィス・事務サポート(33.2%)、販売関連職(24.6%)となっている。

このギャップは、AIによる労働力への代替効果がモデルの性能だけでなく、業務の属性や責任所在、組織プロセスによっても大きく左右されることを示している。法律業界は利益調整や訴訟戦略判断、終身責任の負担などが含まれる。金融サービスは顧客関係や非定型情報判断に依存しており、一方プログラミング系職種は業務対象が明確でフィードバックループが短いため、実際の代替進捗が速い。
コンピュータ業界は「平等対応」、金融業界は顕著な分化へ
実際の暴露度が最も高い上位20職種のうち、8職種がコンピュータと数学関連で、就業者数は約159万人、業界全体の30.2%を占めている。レポートは、コンピュータ業界では給与水準とAI暴露度の間に必然的な関連性はなく、AIの影響が業界全体に等しく及んでいる点を強調している。これは技術進化に対する業界全体の脆弱性を示している。
金融業界はそれとは異なる分化傾向を示している。一部の職種は業務責任(例:監査、会計)を引き受ける必要があり、職種により業務成果の標準化度合いもバラバラなため、金融業界全体の実暴露度は低いが、内部では明確な分化がある。このうち、Market Research Analystsの実暴露度は64.8%、Financial and Investment Analystsは57.2%で、代替リスクが高い。その一方、顧客関係維持や非標準判断が求められる職種は暴露度が比較的低い。
賃金暴露総額で見ても、1.45兆ドルの実暴露給与は主に5業種に集中している:オフィス・事務サポート(2896億ドル)、ビジネス・金融(2474億ドル)、管理職(2217億ドル)、コンピュータ・数学(2152億ドル)、販売関連職(1995億ドル)。レポートは、専用大規模モデル to Bビジネス展開の方向性ガイドとして、確実性を求めるなら事務、コンピュータ、金融などすでにはっきりした代替現象が出ている業界を徹底開拓すべきであり、「ゼロからイチのビジネス突破」を目指すなら教育や医療診断など他業界が依然大きな可能性を持つとしている。
代替は即失業ではなく、賃金再編の波が着実に到来
レポートは「暴露」と「代替」の概念を明確に区別している。暴露とは、タスクがAIによる支援・自動化・再編成の可能性があることを意味し、これらすべての給与収入が同じ比率で消失するわけではない。AIの経済的影響を最終的に決めるのは、企業の導入スピード、モデルの性能限界、組織プロセスの変革、規制など複合的な要素だ。
しかし同時にレポートは、AIのマクロ的影響は単純に雇用数の直線的減少だけには現れないと指摘する。 よりありうる展開としては、単一業務職が一部代替され、多業務職種が再編成される。給与コストの一部が圧縮され、より多くの労働プロセスが再評価される。特にAIエージェントは「給与が高いほど代替率が高い」という特性を持つため、AIが消費者サイドの収入に及ぼす潜在的影響はより深刻になる可能性がある。
投資家にとって、レポートの中核となる結論は、AIの収入面における中期的な成長ポテンシャルはソフトウェア市場規模だけでなく、より大きな人件費プールから算出すべきであるということだ。現時点で大規模モデル事業者のARR浸透率は極めて低い水準にあるが、その裏には人類の給与構造が今まさに再評価と再編という未評価のシステム的変革に直面しているという事実がある。
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